DV男に心を壊された私が自分を取り戻すまでの戦い・後編

目次
好青年の彼と付き合い始めたら、ちょっとした喧嘩から頬を叩かれた。
その日以来、たびたびDVをするようになった彼。
しかし、彼とは別れられず、ずるずると付き合ううちに心はどんどんすり減っていって……。
工藤まおりさんが経験したDV男との恋愛の結末は、どうなるのか。この記事では後編をお送りします。
→DV男に心を壊された私が自分を取り戻すまでの戦い・前編から読む
なんで私が死ななきゃいけないの?
会いたくないけど会わないと怒られるし、別れたいけど別れられない状態だったある日。
私は憂鬱な気分で家の近くでバスを待っていた。
通り過ぎる車を見て、
「このまま死ねば、彼と会わなくて済むのかもしれない」
と思い、ふらりと道路に出て車に轢かれそうになった。
その時、ようやく気づいた。
「なんであんなクソ男のために、私が死ななきゃならないんだ?おかしくないか?」
ここまで読んで、「別れたくても別れらない」という状況が謎だと感じる方もいると思う。
入籍しているわけではないし、「はーい!別れた!じゃあもう連絡しないで!!」とシャットダウンすれば別れられる。
今ではそう思う。
しかし、当時の私はバス停で気付くまで、そんなことは思いつかなかった。
彼に「死ぬ」と言われたら、やっぱり心配になって話し合いに応じたし、100を超える着信に耐えられなかった。
でも、あの日、バス停で、やっと気付けた。
相手が別れたくないから別れないのではなく、自分が別れたい時は別れていい。
相手がどうのではなく、自分がどうしたのかの方が重要なのだと。
ようやく自分が戻ってきた
バス停でハッとしてからは、彼がどんな行動をしても、「別れる」としか言わないようにした。
彼が「死ぬ」と言って鬼電してきた時も、携帯の電源を切って放っておいた。
寒い夜に家の下まできて、「このままじゃ凍え死ぬ」と言われても無視をした。
ようやく「わかった、別れるから一回話そう。最後に直接話そう」と彼が折れてくれて、カフェで待ち合わせをした。
実際会ったら、そこでも「別れたくない」と説得された。
しかし、何を言われても「無理」「別れる」と、その言葉しかプログラミングされていないロボットのように連呼した。
私は、自分の意思を押し通せるようになって、ようやく自分が戻ってきたような気がした。
私の態度を見て、彼はもう無理かと思ったのかようやく別れてくれた。
別れた後、私の誕生日が近づいた時に「どうしても最後にプレゼントとして渡したいものがある」と言われ、プレゼントとしてDVDをもらった。
家に帰って再生すると、私の友達たちが「誕生日おめでとうー!」と次々言ってくるサプライズムービーだった。
別れた後に、彼が私の友人に「誕生日にムービー作りたい」と掛け合い、完成させたらしい。
彼が勝手に私の友人に連絡し、自分に都合の良いところだけ話したおかげで「なんであんないい彼氏と別れちゃったの?よりを戻したら?」と友人から言われた。
でも、自分を取り戻した私の心には、友人たちの言葉は刺さらなかった。
自分がしたいように生きていい
彼と別れてから数年後。
彼が私の働いていた会社のグループ企業で働いていると、彼と共通の友人から聞いた。
私と付き合っている時はバカにしていた会社に、自ら就職したらしい。
薄々気づいてはいたが、ずっと彼は自分に対して劣等感を抱いていたんだろう。
コンサル会社に勤めているわけでもないのに、喧嘩中に「ファクトはなに?」「PDCA回して?」と延々繰り返していた言葉も、弱い自分を隠すために強がっていたんだと思う。
きっと、彼は私をバカすることで、私よりも優位に立つことで、自分の精神状態を保っていた。
人と比較して、苦しんで、人に依存して、人に拒否られて、また苦しんでいく。
彼は、そんな負のループの中にいたのではないだろうか。
彼に一生会いたくないが、この先彼が誰にも危害を加えることなく、誰かと一緒に居られることを願う。
でも、それは彼が幸せになってほしいのではなく、もう私のような被害者が出ないためにだ。