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キラキラ輝く女性活躍 その裏で増殖する「解脱系男子」とは

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こんにちは、青識亜論です。

私は普段、ネット論客などという肩書で、ネトネトネバネバ、糸を引くような粘着質の発酵系言論を書き続けている人間です。

なぜCuretさんみたいな、キラキラ輝く女性向けネットメディアに記事を書かせていただけることになったのかはわかりませんが(誰がどう見てもそういうキャラではない)、せっかくなので、この素敵な場所に一抹の発酵臭をお届けしたいと思います。

素晴らしいフレンチのフルコース。なぜかデザートは納豆キムチ、みたいな場違い感をお楽しみいただければ幸いです。

石の下でうごめく虫の話をしようじゃないか

Curetさんの記事、どれも面白いですよね。

私は特に、この記事がめちゃくちゃイイなというか、そのとおりだなと思ったので、ちょっと冒頭に取り上げたいんですけど、

女性の年収が上がったら一緒に喜んでくれるような男性のことを「ジェンダーイコール男子」と表現したうえで、アルテイシアさんは次のように述べられています。

彼らはちゃんと実在するが、石の裏とかにひっそり生息している。イケメンで話し上手とかじゃないし、地味で目立たない奥手タイプなので、粘り強く石を引っくり返さないと発見できない。

かつ女子からデートに誘ったり、お試し交際を提案したりと、主体的に動かないとゲットできない。

石の裏でヒソヒソうごめている虫、言いえて妙ですよね。

男性ジェンダーを積極的に発現して、異性をゲットする競争。
そこから一定距離を置いた男性は、女性のみなさんの視界の外で、ヒッソリ暮らしているのです。

今日は、そんなジメジメとした石の下を観察してみましょう。

ジェンダーイコール「先進地域」徳島県から

私は今、徳島県に住んでいます。
実は、徳島県は、「女性活躍」の最先進地域なんですね。

「え? 田舎なんて男尊女卑の嵐なんじゃないの~?」

と思った人もいるかもしれませんが……実は、統計を参照すると、イメージと全く異なる実態が見えてきます。

女性管理職の割合は、 徳島県は全都道府県で唯一、2割を超え、1位となっています。
(参考:日本経済新聞「人口減加速、進む女性登用 徳島が育成策で初の2割超」

ちなみに、会社の経営者や役員に占める女性の割合も、徳島県はかなり上位に位置しています。

四国では昔から、「讃岐(香川)男と阿波(徳島)女」と言われるように、徳島の女性はとても働き者で優秀だと言われていまして、女性がリーダーシップをとる風土が根付いているんですね。

さてさて。

そんなジェンダーイコールな素敵な土地で、私は地方公務員として働かせてもらっています。

お役所仕事というと、なんとなく旧態依然とした体制で、ジェンダーフリーも進んでなさそうと思われる方もいるかもしれません。
しかし、実際には、出産育児関係の福利厚生は比較的充実していますし、若い世代では職員構成のジェンダーバランスもまずまず均整がとれてきています。

上の世代の部長クラスの管理職ともなると、まだまだ男性が多い状況ですが、若い職員に「女性は下」などという意識はまったくありません。
男性職員が束になってもかなわないほど、パワフルな仕事をする女性職員もたくさんいます。

女性の上司にお仕えする機会も多く、ハラスメントになりかねない言葉や振る舞いをしないようにする職員教育はかなり徹底していると言えるでしょう。

とってもポリティカルコレクトネス(※性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いること)な環境で鍛えられた、若い職員。
彼らはさぞかし素敵な家庭を築くだろうと思ってみると……

同世代の職員、(私も含めて)未婚の職員が多い……?

地方出身の方とか、地方で暮らしたことのある方は御存知と思いますが、地方公務員という職業は、地方住まいとしてはなかなか安定していまして、経済的にも社会的にも悪くない身分です。

得ようと思えば出会いの場もいくらでもありますし、お見合いの話もひっきりなしに来るわけです。
けれど、それでも、体感的に、未婚の人が明らかに多い(特に若い世代の男性) ようなのです。

フラットな男女関係が「悟り」をもたらす

そういえば、最近、Twitterで「女を不快にさせないスキル」というワードが、軽くバズッていましたね。

この大元の女性の発言の当否はさておき、異性にアプローチをすること、特に男性が女性にアプローチをするということは、常に「不快さ」を与えるリスクがあります。

対照的に、女性が男性にアプローチしても「不快さ」を与えるリスクは少なく、これは男女の「ジェンダーギャップ」であると言えるでしょう。

そして、現代社会において、異性に「不快さ」を与えるということは、「ハラスメント」です。
職場でも、ナンパでも、婚活パーティでも、お見合いの場でも、女性が不快感を覚えれば「ハラスメント」です。

女性と関わることには、少なくとも、「ハラスメント」になりうる危険性があります。
そして、「ハラスメント」をしでかした男性に対する現代社会の判決は、社会的極刑の一択です。

最上級のポリティカルコレクトネスが求められるお役所世界でサバイバルしてきた人々は、そのことをとてもよく理解しています。

「ハラミ会(※ハラスメントを未然に防止する会……男性のみで飲み会をやること)」のような露骨なことはまずありません。
しかし、それでも、彼らはハラスメントを犯してしまうリスクを最小化する術を身に着けます。

女性を不快にさせない最強のスキルは、女性に近づかないことなのです。

誤解を与えないように、あらかじめ言っておきますが、もちろん、若い世代の男性職員で早くに結婚している人はたくさんいます。

身だしなみにはじまり、話し方や物腰、立ち居振る舞いで、女性に不快感を与えるリスクを最小化し、お付き合いをして、首尾よく結婚までこぎつける。

しかも、それで終わりではありません。

ジェンダーイコールな価値観を徹底的にインストールされているみなさんは、家事や育児にもたいへん熱心で、しかもそれでいて仕事もバリバリとこなしていきます。

家事、仕事、育児、家事、仕事、育児……と、ものすごい速度でタスクをこなされており、もう残像でも見えそうなほど毎日忙しく動かれています。

もちろん、そんなことができる人ばかりではありませんから、ジェンダーイコールで未婚の人々は、それを見ながら、こう思うのです。

「すごいなあ。私にはとても真似できそうにない」
と。

私が見る限り、仕事熱心でまじめな男性ほど、どうやらこの境地に至ってしまいやすいようなのです。

仕事が忙しいなら、「奥さん」を迎えて、家事や身の回りのことをやってもらえばいいじゃない、と思う方もいるかもしませんが……それは、ジェンダーイコールがインストールされていない考えです。

一人前に仕事もやり、家事も育児も一人前、これが現代のジェンダーイコールです。

ポリティカルコレクトな価値観をしっかり学習した、まじめな男性ほど、結婚で自分の負担を減らそうとするのではなく、「結婚すればあれもしなければいけない、育児でも当然対等な役割を果たさなければいけない」と考えてしまいがちです。

そして、ジェンダーイコールを徹底し、ジェンダー的な価値観の呪縛から解放された結果、ふと、一つの結論……「悟り」にたどりつきます。

「結婚、しなくてよくない?」

誰の背中も蹴り飛ばしたくない。希望は、解脱(ファイア)

男性は社会に出て働き、家を支える責任を果たさねばならない。
女性はそんな男を助けて、家事と育児をこなさなければならない。
……そのような呪縛から解き放たれた人の前には、一つの「悟り」が見えてきます。

結婚をして、子どもを育て、立派な家庭を築く、という「煩悩」から解放されれば、確かに、私たちはずっと軽やかに自由に生きることができるのです。

この種の「悟り」は、早くからフェミニズムによって、ジェンダーの呪縛から解き放たれている女性の方々は、もうかなり前から体得されていたように思います。

上野千鶴子先生が『おひとりさまの老後』でベストセラーを飛ばされ、高級タワーマンションで悠々自適の生活を送られているそうです(実に羨ましい)。

それだけ、「生涯独身」という選択肢は、女性の皆さんにとって現実的なものになっている。
あるいは、なってしまった、ということなのでしょう。

一部の男性も、遅ればせながら、その境地に近づいているのです。

昔、草食系男子という言葉が流行した後で、女性への欲望の一切を絶った「僧職系男子」なる言葉が発生したのを御存知でしょうか。

私の周囲で生息しているある種の未婚男性は、この「僧職系」という言葉がぴったりあてはまりそうです。
彼らはしっかりとした収入と社会的地位のある職業につき、恋愛や結婚に時間や金を消費せず、手堅く生きていきます。

女性には見えないように、石の下に隠れながら……そして、そのパーソナルスペースに快適な生活空間を築き、趣味や蓄財に没頭しているのです。

自暴自棄になっているわけでも、ひねているわけでもなく、彼らは誰かを不快にするというリスクを背負いたくないだけなのです。

仕事も家事もそれなり以上にできる彼らの部屋とデスクは、すっきりと片付いています。

そんな賢明な彼らにとって、「恋愛」や「結婚」はあまりにも無駄なコストであり、不要なリスクです。

一切の無駄遣いをすることなく、彼らは積立型NISAなぞでこざかしく資産形成をして、誰も不快にさせない究極の場所、つまりファイア(※FIRE……経済的に自立して早期リタイアすること)という名の「解脱」へ向かって突き進んでいます。

ファイアというのは、「働かずに自分の資産のあがりだけで食べていく」といういわば究極の「隠遁生活」です。

夢物語だと思われるでしょうか。

しかし、女性や子どもという、金も時間もかかる存在を完全に無駄と切り捨て、お酒や車といった男性ジェンダーにつきまとう顕示的消費をすべてやめ、高収入で手堅い職業でひたすら蓄財に励めば、現代の男性にとって、それはきわめて現実的な選択肢です。

「なにも煩わしいことをせず、自分のやりたいことだけ一人でやって生きていく」

「ジェンダー」とか「女性」とか「ポリティカルコレクトネス」とか、そういう「彼らが煩わしく感じるもの」と一切かかわらなくてよい場所にたどり着くため、日々、コツコツと積み重ねているのです。

石の下でうぞうぞと解脱を目指す彼らを、女性のみなさん、どうか生暖かく見守ってあげてください。
彼らこそ、ジェンダーを降りた男性の姿なのですから。

結論:私にはどっちも無理かもしれません。ごめんなさい

ジェンダーイコールな社会になり、女性にも多様な生き方の選択肢が開かれること、これは間違いなく素晴らしいことです。
そうした変化は、これからますます進んでいくことでしょうし、それは歓迎すべきことだと私は思います。

ただ一方で、すべての人がそうやって「解脱」してしまった社会は、おそらくサステナブルではないでしょう。

インターネットでは、「男はここがよくない」「女はこれだからダメだ」と、性別による叩き合いや揶揄合戦が日夜繰り広げられています。
しかし、そうやって両性の嫌悪を煽ることは、建設的な行為だとは言えません。

お互いに歩み寄りをすることが、どこかで必要になるのではないでしょうか。

最後に、私自身のこともお話しておきたいと思います。

実は、私のところにも、大変ありがたいことに、ときたまお見合いのお話が飛んできていて、お相手もお医者さんだったり、薬剤師さんだったり、たいへん社会に貢献されている、立派な方々です。

知性的で、女性としてもたいへん魅力的な方々です。

でも、そんな方々に、私みたいなヘッポコでいい加減な人間が、完全無欠に「ジェンダーイコール」にバリューが提供できるのかと考えると……なかなか、慎重にならざるをえません。

かといって、僧職系男子として解脱を目指すみなさんのように、煩悩が捨てられるかというと、それも難しいのです。

私、煩悩にまみれてますから。

108どころか1080ぐらいの煩悩が脳内にうごめいていて、フルHD解像度でオンライン上映してしまいそうなほどです。

なので、煩悩を捨てることも全うすることもできず、婚活石の周りでウロチョロしているかわいそうな虫さんです。
石をぶつけないでください。死んでしまいます。

あ、そうそう。
最近、お付き合いしていた女性と別れましたので、パートナー募集中です。

ネット論客のネトネトネバネバした発酵臭に耐えられる女性の方。
「いやいや、むしろ納豆キムチは大好物だよ」という女性の方。
いらっしゃったらぜひ前向きにご検討を。

ジェンダーイコール先進県、徳島でお待ちしています。

青識亜論

ネット論客。京都大学経済学部卒業後、徳島で地方公務員としての仕事に従事するかたわら、ネットでの言論活動を行っている。表現の自由やフェミニズムをめぐる意見発信...

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