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男が嫌いなのに女を使って出世してしまいました…アルテイシアさんの人生相談 後編

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Curet編集部です。今回、力強くも優しく女性を力づけてくださることで人気の作家、アルテイシアさんに「男嫌いなのに、女を使って出世してしまった」と悩む女性のご相談にお答えいただきました。

男が嫌いなのに女を使って出世してしまいました…アルテイシアさんの人生相談 前編から読む

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男が自分に翻弄されると過去のトラウマが消える「気がする」

以前、Curetの記事「25歳になる女性を待ち受ける性差別を蹴とばす方法」に書いたが、20代の私は会社でセクハラや性差別を受けていた。

その偉いおっさんとやったのは一度きりだが、その後「会いたい」「食事に行こう」と彼からメールが来るようになり、立場が逆転したような気がした。

それによって、普段自分を見下してくる男たちより上に立てた気がして、「ザマア!!」と思ったのだ。

 

病んでいる(病んでいる)

サビのようにリピートしたが、みんな多かれ少なかれ病んでいる。

 

特にジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパンで、女性はメンがヘラって当然だと思う。「女性差別の強い国ほど、女性の自己肯定感が低い」というデータもある。

 

そして感受性が強くて繊細な人ほど、メンタルに影響を受けやすいものだ。

 

拙者がビッチだった理由として、「こんな自分をぶっ壊してやる」という中二病的な発想もあった。自分を大切に思えなかったから、自傷のようにセックスしていた部分もある。

 

そんな私が若い女性に言いたいのは「もっと他人のせいにしよう」ということだ。

 

一度他人のせいにして、心を回復させよう

自己責任教に汚染された日本では、「何もかも自分のせいだ」と自責する若者が多い。特に女性は自責する傾向が強いと思う。

 

自分を責めて自己嫌悪しても自己肯定感が下がるばかりで、問題は解決しない。

 

相談者殿は「私がああいう行動をしてしまったのは、男尊女卑社会で男に傷つけられてきたせいだ」と考えてみてほしい。

 

いったん他人のせいにすることは、心の回復に必要なステップなのだ。

たとえば、毒親育ちも「自分が生きづらいのは親のせいだ」といったん認めること。そのうえで過去と向き合い、現在の自分に与えている影響を理解することが、心の回復につながる。

 

過去と向き合うのは、とてもつらい(とてもつらい)

三国志の霊帝顔でリピートするが、自分がなぜつらいのか分からない方が、もっとつらい。

 

それにネガティブな感情に蓋をすると、何かの拍子に蓋が開いた時にワケがわからず混乱して、もっと苦しむことになる。

 

相談者殿は、自身を「過去のトラウマに苦しむ被害者なのだ」と認めてほしい。

嫌だったことを書き出して「つらかったね」と自分をいたわろう


そのうえで、男からされて傷ついたことや嫌だったことを思い出して、書き出してほしい。その時に感じた感情も書き出して「つらかったね」「傷ついて当然だよね」と、過去の自分をいたわってほしい。

 

そうやって自分の傷をケアすることが、心の回復につながると思う。かつ、心の傷が現在の自分の思考や行動に与えている影響についても、考えてみてほしい。

 

フェミニズムを学ぶと、楽になる

また、相談者殿にはフェミニズムを学ぶことをお勧めしたい。

 

私自身、20代でフェミニズムの本に出会って「同じように苦しむ女性がいっぱいいるんだ」「性差別やセクハラに怒ってよかったんだ」と気づいて、楽になった。

 

20代の私は「セクハラを笑顔でかわすのが賢い女」と刷り込まれ、自分の感情を押し殺して、自尊心をゴリゴリに削られていた。

 

不眠や過食嘔吐に苦しんだ当時のことを「終わらない悪夢を見ているようだったよ…」と進撃のユミル顔で振り返る我である。

 

そこから月日が流れ、40代の私は性差別やセクハラにバチバチに怒っていて、それがコラムを書く原動力になっている。

 

「怒りじゃ何も変わらない」「怒ってばかりで疲れませんか?」的なクソリプも来るが、ダブルピースで元気いっぱいに生きている。

 

むしろ怒りを言葉にして表明することで、私は俄然生きやすくなった。自分の苦しみと向き合い、その根底にある怒りを解放することで、人は楽になれるのだ。

また、コラムを読んだ女性たちから「自分も怒っていいんだと気づいて、楽になった」と感想をいただき、ますます元気玉をチャージしている。

 

本を読んだり、過去の傷つきをシェアして傷を癒す


相談者殿には『女ぎらい ニッポンのミソジニー』(上野千鶴子著)、『私という病』(中村うさぎ著)をおすすめしたい。

 

両書には、男社会で引き裂かれた女性である「東電OL」について書かれた文章があり、ヒントになると思う。

 

相談者殿には、フェミニズムについて語れる場を見つけてほしい。

 

男社会で傷ついた女性同士で、過去の傷つきを吐き出してシェアすることは、何よりの癒しになる。ツイッター等でイベントやコミュニティを探してみてはどうだろう。

 

私が主催する「アルテイシアの大人の女子校」のメンバーからも「フェミニズムについて語れる仲間ができて、生きやすくなった」との声が寄せられる。

 

そんな彼女らの話を聞くことで、私自身も癒されている。「自分の傷が誰かの傷を癒す」という体験が大きな力になることを、相談者殿にも知ってほしい。

 

そうやっていろいろやっているうちに「あれ、前より生きやすくなってるな?」とふと気づく瞬間が来るだろう。

 

そうなった時に「そもそも私、そんなに出世したかったんだっけ?」と思うかもしれない。「もっと自分らしく働ける会社に転職しようかな」と思うかもしれない。

 

あなたは有能ながんばりやさんなのだと思う。どこのメーカーか知らないが(めっちゃ知りたいが)、無能な人間を出世させるのは無理だろう。セックスだけで出世したんじゃないと思うよ。

 

だから自信を持って、自分らしく生きてほしい。そのために「これなんか違うな」「自分らしくないな」「本当にしたいことじゃないな」という“感覚”を大事にしてほしい。

 

それが本来の自分らしく生きる鍵だし、そうすれば物事は大体うまくいく。

 

以上、少しでもヒントになれば幸いだ。

 

あなたは全然大丈夫だし、胸を張って生きてくださいね。

 

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アルテイシア

アルテイシア/作家。神戸生まれ。『59番目のプロポーズ』でデビュー。著書に『モヤる言葉、ヤバイ人』『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過...

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